日々の研究や水処理のアレコレなどを綴ります

排水処理対策

【プロが解説】夏本番前に!排水処理場の臭い対策と3つの重大リスク

 2025/06/13   

こんにちは。澤本商事の澤本享宏です。 6月に入り、梅雨の蒸し暑さを感じる日が増えてまいりました。この時期から夏本番にかけて、私たちがお客様からいただくお問い合わせで急増するのが、排水処理施設から発生する「臭い」に関するご相談です。 「去年も臭いで悩まされた」「本格的に暑くなる前に対策しておきたい」というお声も少なくありません。 そこで本日は、夏場の臭い対策について、その原因とリスク、そして具体的な解決策までを詳しく解説いたします。

なぜ夏場に排水処理の臭いは強くなるのか?

毎年同じように運転管理していても、夏場になると特に臭いが強くなるのには、明確な理由があります。

原因1水温上昇と微生物の活動変化

気温の上昇に伴い、排水処理槽内の水温も上昇します。水温が上がると水中に溶け込める酸素の量(溶存酸素)が減少し、槽内が酸素不足の状態に陥りやすくなります。 その結果、酸素を必要とする好気性微生物の活動が弱まる一方で、酸素のない環境を好む嫌気性微生物が活発化。この嫌気性微生物による分解プロセスが悪臭の主な原因となります。

原因2汚泥や油分の腐敗と悪臭成分の発生

水温が高い状態は、調整槽や曝気槽に溜まった汚泥や油分の腐敗を促進します。特に、油分などが嫌気性微生物によって分解される際に、硫化水素(卵や玉ねぎが腐ったような臭い)や「メチルメルカプタン」といった強烈な悪臭成分が発生し、周辺に拡散してしまうのです。

臭い問題が引き起こす3つの重大なリスク

「少し臭うくらいなら…」と臭い問題を放置しておくと、事業継続に関わるような重大なリスクに発展する可能性があります

リスク1近隣トラブルと企業信用の低下

悪臭は風に乗って遠くまで拡散するため、近隣の住民の方や施設からのクレームに直結します。一度クレームが発生すると、企業の社会的信用を損なうだけでなく、行政指導の対象となる可能性もあり、継続的な対策が求められます。

リスク2従業員の健康被害と労働環境の悪化

硫化水素などの悪臭成分は、人体にとって有害です。高濃度のガスは目や喉、皮膚の粘膜を刺激し、頭痛や吐き気を引き起こすこともあります。毎日施設で働く従業員様の健康を守り、安心して働ける環境を維持するためにも、臭い対策は不可欠です。

リスク3施設の腐食と修繕コストの増大

硫化水素ガスは、水分と反応して硫酸を生成し、コンクリートや金属(鉄、ステンレスなど)を強力に腐食させます。設備の腐食は施設の寿命を縮め、数年で大規模な修繕や機器の交換が必要になるなど、予期せぬ多額のコストに繋がるケースも少なくありません。

【対策編】即効性と根本改善を両立する澤本商事の臭気対策

弊社では、目の前の臭いをすぐに消す「即時対策」と、臭いの発生しにくい環境をつくる「根本対策」の両面から、お客様に最適なプランをご提案します。

ステップ1無料の現地調査と臭気診断

まず専門スタッフが現地へお伺いし、臭気の発生源(調整槽、曝気槽など)や臭いの種類を特定します。その場で悪臭が発生している水を採取し、原因物質に合わせた脱臭剤のサンプルテスト(脱臭テスト)を無料で行い、効果を直接ご確認いただくことも可能です。

ステップ2原因に合わせた最適な脱臭剤の選定

弊社では、原因や状況に応じて様々なタイプの脱臭剤を取り揃えています。

ステップ3持続的な改善に向けた運転管理サポート

脱臭剤による対策と並行して、曝気量や汚泥の管理など、臭気が発生しにくい環境を維持するための運転管理についてもサポートいたします。これにより、薬剤コストの最適化と持続的な臭気抑制の両立を目指します。

臭気対策は夏本番前の「今」が重要

排水処理施設の臭気問題は、一度深刻化すると解決に時間とコストがかかります。多くの工場が悩み始める夏本番を迎える前に、先手を打って対策を講じることが、結果的に被害を最小限に抑え、コストを最適化する鍵となります。

「最近、少し臭いが気になり始めた」「毎年夏になるとクレームが来て困っている」など、少しでも不安を感じたら、ぜひ一度、澤本商事にご相談ください。

水質・臭気検査、ラボテスト、お見積りまで無料で実施させていただきます。 お客様の悩みを一つでも多く解消できるよう、迅速丁寧に寄り添ってまいりますので、お気軽にお問い合わせください。

排水処理で起こる【バルキングチェックポイント3選】のご紹介

 2025/04/01   

こんにちは。澤本享宏です。
気温の上昇に伴い、微生物の活性も高まり、排水処理が安定してくる季節となりました。

本日は【バルキングのチェックポイント3選】をご紹介いたします。

さまざまなお客様のもとへ伺っていますが、お困りごとの中でもバルキングの発生割合が高いです。
バルキングとは、排水処理において活性汚泥の沈降性が悪化し、沈殿槽で固液分離が十分に進まない状態を指します。

今回は、これに当てはまれば即対策が必要!という現場でのチェックポイントを記載します。参考にしていただければ幸いです。

バルキングの種類などはこちらの記事をご覧ください。
バルキングとは?(数値化で対策・タイプ別バルキング改善方法)

チェックポイント1汚泥界面が1mを切った時

汚泥界面
※この写真はちょうど汚泥界面1m

汚泥界面:沈殿槽で水と汚泥が分離する境界面のこと。つまり、処理された汚泥が水面から何m下にあるかを示します。

上記のように、汚泥が水面近くまで上昇している場合は、越流の危険信号です。即対策が必要です。

チェックポイント2SV30が90~100%の場合

SV30が90~100%の場合

SV30:曝気槽の最終槽の汚泥をシリンダーに入れ、30分後にどこまで沈降するかを調べる指標。

※SVは Sludge Volume(スラッジ・ボリューム) の略で、スラッジ=汚泥(微生物の塊)を意味します。

SV30で沈降しない場合、有機物の分解が遅れており、沈殿槽でも沈降不良を引き起こす可能性があります。

チェックポイント3汚泥の粘性がトロトロで、粘度の数値が20以上

汚泥の粘度の数値が20以上
※写真の粘度は90です。

粘度が高いと、曝気槽の汚泥がチョコレートのように粘度を持ちます。採水してみるとトロトロの状態です。写真でも、なんとなくトロみとテカリがあるのがわかると思います。

粘性は、MLSSが高いときや油脂分解が遅れているときに上昇します。粘性が高いと、①や②の沈降性にも影響を及ぼします。

以上がバルキングチェックポイント3選になります。

このような状況が発生している場合は、すぐに対策が必要です。

今回ご紹介したお客様は、 油脂分解の遅れ難分解性物質の流入 が原因でした。そのため、弊社取扱いの 油脂分解剤「油トールB-SW」 と 栄養剤「SANA-N改1-SW」 を使用しました。

油トールB-SW

油トールB-SW<

SANA-N改1-SW

SANA-N改1-SW
 

これらの資材を適切に投入し、弊社のノウハウに基づいて施設運用を行った結果、以下のような改善が見られました。

改善点1汚泥界面の改善

汚泥界面の改善
汚泥界面 1m ⇒ 2.2mまで沈降

 

改善点2SV30の改善

SV30の改善
SV30 100% ⇒ 41%まで改善

 

改善点3粘性の改善

粘性改善
粘度 90 ⇒ 15まで改善

このように、適切な対策を講じることで、大幅な改善が可能です。

弊社取扱いの資材を適正量使用し、それに合わせた施設運用を行うことで、槽内の油脂分解を促し、生物活性を向上させ、バルキングの対策につなげることができます。

「チェックポイント3選」は、「これはなんだろう?」と思ったときに少しでも参考になれば、という思いでご紹介しました。

では次回のチェックポイント3選でお会いしましょう。

最短当日無料で調査&ご提案

排水処理場の困りごとは待ったなしです!
すぐに駆けつけ、現場調査、水質検査、ラボテスト、資剤選定までを無料でさせていただきます。
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よくあるバルキングの原因と対策事例はこちら

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曝気槽で活躍する微生物とは?その種類と活動についてPart-2

 2025/02/17   

みなさん、こんにちは。代表の澤本悟博です。
先週の金沢は、積雪で(3日間で40cm)、久しぶりに除雪車が活躍してくれました。
人力で行うよりも3倍は早いです。
会社にとっては必要なアイテムとなりました。

さて、今回は2025年1月14日の記事「曝気槽で活躍する微生物とは?その種類と活動について」の続きです。
Part-2として、微生物の動画を載せていきます。

 

◎ボルティセラ



分類:原生動物 繊毛虫類 縁毛目
形態:釣鐘形(ツリガネムシとも呼ばれます)
大きさ:35~120㎛程度

尾部にミオネーム(筋糸)入りの柄を持ち、基質に固着して生活します。
数が多い場合は空気量が豊富で活性汚泥が良好な時に出現します。
そんな時は透視度もよく、処理水質も良好となります。

お客様からも「ボルティセラが出現すると調子がいいよ!」と言われますが、実は下記のような場合があります。

数が少なく糸状菌と一緒に出現する。
それは、有機体窒素源が不足している時です!
フロックも解体気味で、空気量も不足気味な時となります。
まずできることは、㏗、SV30、粘性、汚泥界面などの確認です。
汚泥界面が高い場合には栄養剤の増量が必要になる場合があります。

また、沈殿槽が透き通るように透明の場合は危険です!(覚えておいて損はない)

それはなぜか?

糸状菌による沈殿槽でのろ過性能が増し、透明になっているのです。
そんな場合は曝気槽の汚泥の色も白っぽい場合があります。

汚泥の色が映って水面が透明に見えるのです。

「昨日までは汚泥界面も低く、透視度もよかったのに、朝来たらバルキング⁉」

そう、糸状菌バルキングです😢

糸状菌のことは今まで何度も載せていますのでこちらの記事を参考にしてください。

油脂分解・バルキング対策・臭気対策

通常良好生物と言われている「ボルティセラ」ですが、実は糸状菌と仲が良く、管理者の判断を混乱させる場合があります。

顕微鏡の観方からアドバイスいたします。
バルキング対策でお困りの方は以下からお問い合わせください。
敏速に対応いたします。

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排水処理での消泡剤はシリコン系よりアルコール系がおすすめ

 2025/01/16   

こんにちは。澤本享宏です。
年始に風邪をひきダウンしていました。
現在インフルが猛威をふるっているので、みなさまもどうかお気を付けください。

さて、本日は排水処理施設で使用する際におすすめの消泡剤についてです。
題名にもありますが、使用するおすすめの消泡剤はズバリ、アルコール系です。

なぜアルコール系なのか説明していきます。

そもそも消泡剤の系統は大きく2つ。「シリコン系」と「アルコール系」です。

その2つの比較は以下の通りです。
 

シリコン系 アルコール系
特徴
  • ㏗が低いところで効果あり
  • 持続時間が短い
  • 原液での使用
  • ㏗が低くても高くても効果あり
  • 持続時間が長い
  • 希釈して使用

 
排水処理では㏗が高いところが多いため、シリコン系だとほぼ効果が見られません。

以下が2つを比較した動画です。

シリコン系原液を投入して10分後。

 

アルコール系を投入して2-3分後。
 
このようにシリコン系では排水処理の曝気槽の泡が消えません。
しかし、アルコール系ではしっかり消えてくれます。
曝気槽の表面が埋まるほどの泡があると、酸素の取込が悪くなり好気性生物の発生減少。⇒処理性の低下につながります。
そのため泡の対策は必須です。

では次に泡の種類はどれ?という疑問もわいてくると思います。
それは弊社の過去の記事「曝気槽の泡対策の改善効果と効果的だった資材」をご覧ください。

弊社はすぐに駆けつけ、現場調査、水質検査、ラボテストまでを無料でさせていただきます。

泡の問題でお困りのお客様いらっしゃいましたらお気軽にお問い合わせください。

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曝気槽で活躍する微生物とは?その種類と活動について

 2025/01/14   

明けましておめでとうございます。
本年も何卒よろしくお願いいたします。

代表の澤本悟博です。
年始に風邪をひき、久しぶりの発熱で唸っていました。
みなさまも、時節柄どうかご自愛ください。

さて、本日は日ごろ顕微鏡で観察している、曝気槽で活躍する微生物の活動について綴りたいと思います。

◎ロタリア(袋形動物 輪虫類 ヒルガタワムシ目 ヒルガタワムシ科)

良好時に出現する生物です。
但し、出現数、大きさ、動き方などによって良い方向性に向かうのか、悪い方向に向かうのか(バルキング状態)を判断しています。

低負荷時で過曝気状態の時に、大量発生する場合があります。
そんな時はBOD源の添加、空気量を下げるなどの対策が必要となります。

◎パラメシュウム(繊毛虫門ゾウリムシ目の原生動物)通称ゾウリムシ

中間生物と言われていますが、出現数が多いときは、負荷が高く空気不足であり、DO(溶存酸素)も0.1~0.7程度となっている現場が多くなります。
パラメシュウムが多く、曝気槽の状態も悪くなった場合は、臭気が発生することもあります。

◎スピリルム(スピリルム科の細菌でグラム陰性で螺旋状を呈する。通称らせん菌

負荷が高く、低DO環境で出現する。硫化水素が発生する環境下での出現も多い。
嫌気性の菌なので空気量を増量を行ったり、㏗調整も必要となってきます。

沈殿槽での透視度も3~5cm程度、沈降性もSV30-99~100%と悪くなり、沈殿槽の汚泥界面も高く、バルキング状態となっていることがあります。

また固定床などが曝気槽に組み込まれている場合、固定床が目詰まりし、嫌気状態となり発生することもあります。
その場合は硫化水素臭等が酷く、臭気対策が必要となります。
 

このようにして、出現微生物により曝気槽の状態を推測することができます。
また、適正な対策も行うことができます。空気不足であれば、ブロワーの増強、散気管の増設等、根本解決策も提案しています。

プラント適正能力検討に関するページはこちら

今後も微生物の写真や動画を載せていきます。(無断転載はお控えください)
次回もお楽しみにお待ちください!

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