工場の排水処理における「散水ろ床法」とは
こんにちは、さわまる博士です。
本日は、古くから利用され、現在でも多くの施設で活躍している排水処理技術の一つ、「散水ろ床法(さんすいろしょうほう)」について解説します。これは活性汚泥菌などの微生物が活躍する、興味深い仕組みを持つ処理方法です。一緒に学んでいきましょう。

散水ろ床法とは、どのような仕組みなのでしょうか?
散水ろ床法とは、簡単に言えば「微生物が付着した『ろ材』が充填された層(これを『ろ床』と呼びます)の上から排水を散布し、ろ材表面に形成された生物膜に汚れを分解・除去してもらう方法」です。
微生物の住処となる「ろ床(ろしょう)」
この方法の心臓部が「ろ床(ろしょう)」です。これは、砕石や軽石、あるいはプラスチック製の特殊な形状のブロックやリングといった「ろ材(ろざい)」を水槽内に充填した層のことです。このろ材の表面が、活性汚泥菌などの微生物にとって最適な住処となり、ここに微生物が高密度に付着して「生物膜(せいぶつまく)」という集合体を形成します。
排水を散布する「散水」の役割
汚れた排水は、この「ろ床」の上部から、全体に均一に散布されます。回転式の散水アームやノズルが用いられます。排水を散水することで、水がろ材の表面を薄い膜状に流下する際、空気中の酸素が効率的に水中に溶解します。これが、好気性微生物の活動を支える上で重要な役割を果たします。
ろ材表面で活動する「生物膜」
ろ材表面に形成された「生物膜」には、有機物を分解する能力の高い活性汚泥菌などが高濃度で存在します。排水がこの生物膜の表面を通過する際に、微生物が排水中の汚濁物質(有機物など)を捕捉し、栄養源として摂取・分解するのです。
浄化水と剥離汚泥
ろ床内を通過する間に、排水は浄化されて処理水となり、ろ床下部から排出されます。一方で、古くなったり厚くなりすぎたりした生物膜は、自然にろ材から剥離します。この剥離した生物膜(剥離汚泥)は処理水と共に流出するため、後段に「沈殿槽」を設け、固液分離を行う必要があります。
散水ろ床法のメリットは何でしょうか?
この技術が長年にわたり利用されているのには、いくつかの利点があります。
運転管理が比較的容易
活性汚泥法と比較して、高度な運転技術を要する場面が少なく、運転管理が比較的容易であるとされています。微生物がろ材に固着しているため、システムとして安定しやすいのが特徴です。
負荷変動に比較的強い
工場排水のように、水量や水質の変動が大きい場合でも、ろ床に保持された豊富な微生物量により、活性汚泥法よりも負荷変動の影響を受けにくく、安定した処理を維持できることがあります。
省エネルギーな場合も
活性汚泥法のように曝気のために大きな動力を必要としない場合が多く、自然通風や散水時の酸素供給で運用できるため、省エネルギーにつながることがあります。
散水ろ床法を運用する上での注意点
もちろん、この方法にも特有の課題や管理上の注意点があります。
ろ床の閉塞(目詰まり)
剥離した生物膜や流入する固形物により、ろ材の隙間が閉塞(目詰まり)することがあります。閉塞が起こると、通水能力や処理効率が低下するため、定期的な点検や、場合によっては洗浄が必要です。
水温の影響
ろ床が外気に開放されている構造上、冬場の低温期には水温が低下しやすく、微生物の活動が鈍化して処理能力が低下することがあります。寒冷地では保温などの対策が求められます。
臭気や害虫の問題
開放的な構造のため、排水の性質によっては臭気が発生したり、ユスリカなどの害虫が発生したりする可能性があります。カバーの設置や害虫対策が必要となる場合があります。
処理水質の限界
一般的に、活性汚泥法ほどの高度な処理は難しく、厳しい放流基準に対応するためには、後段にろ過や消毒などの追加処理を組み合わせる必要があります。
さわまる博士の
豆知識!
「ろ材」には、古くは砕石やコークスが用いられてきましたが、近年ではプラスチック製の、軽量で表面積が非常に広い高性能なものが多数開発されています。これにより、処理能力の向上が図られていますよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日は散水ろ床法について解説しましたが、関連する「生物膜」「ろ材」「沈殿槽」といった各用語についても、順次解説していきます。もし、工場の排水処理でお困りのことや、より詳細な情報が必要でしたら、いつでも澤本商事にご連絡ください。
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