工場の排水処理における「曝気槽(ばっき槽)」とは
こんにちは、さわまる博士です。
前回解説した「活性汚泥法」において、活性汚泥菌が最も活発に働く、いわばメインステージとなる場所があります。それが本日のテーマ、「曝気槽(ばっきそう)」です。
排水処理の心臓部とも言えるこの設備について、その役割から管理のコツまで、詳しく見ていきましょう。

曝気槽とは、どのような役割を持つのでしょうか?
曝気槽は、生物学的排水処理の中心となる水槽です。「曝気」とは空気を供給することを意味し、その名の通り、活性汚泥菌に酸素を与え、排水と効率よく混合させる役割を担っています。
酸素を供給する
活性汚泥法で活躍する多くの活性汚泥菌は、好気性微生物です。これは、活動のために酸素を必要とすることを意味します。曝気槽では、「散気装置」を用いて水中に微細な空気の泡を送り込み(エアレーション)、活性汚泥菌が活発に有機物を分解するために十分な酸素を供給します。
排水と活性汚泥菌を混合・撹拌する
曝気槽のもう一つの重要な役割は、流入してきた排水と槽内の活性汚泥菌を均一に混ぜ合わせることです。これにより、活性汚泥菌が排水中の汚濁物質と効率的に接触し、分解反応を促進させることができます。この混合は、曝気のエネルギーや、場合によっては水中ミキサーなどの撹拌機によって行われます。
曝気槽の主な構成設備
曝気槽は、いくつかの重要な設備から成り立っています。
- 水槽本体
排水と活性汚泥を保持する槽です。コンクリート製や鋼板製などがあり、形状も処理方式によって様々です。 - 散気装置
槽の底部に設置され、空気を微細な泡として放出する装置です。効率よく酸素を水に溶かすためのキーパーツです。 - 撹拌機(水中ミキサー)
散気による撹拌だけでは不十分な場合や、脱窒工程のように酸素を供給せずに撹拌したい場合などに用いられます。 - DO計(溶存酸素計)
槽内の溶存酸素濃度を連続的に監視するセンサーです。この測定値に基づき、送風機の運転を制御し、適切な酸素濃度を維持します。
曝気槽を運転する上での管理のポイント
DO(溶存酸素)管理
曝気槽内のDO濃度は、低すぎると活性汚泥菌の活動が鈍化し、高すぎるとエネルギーの無駄遣いとなります。一般的に1~3mg/L程度に保たれることが多く、DO計を用いて常に適切な範囲にコントロールすることが重要です。
MLSS(活性汚泥濃度)管理
曝気槽内の活性汚泥の濃度(MLSS)も、処理能力を左右する重要な指標です。低すぎると処理が追いつかず、高すぎると酸素不足や沈降不良の原因となります。余剰汚泥の引き抜き量を調整することで、MLSSを適正な範囲に保ちます。
発泡(はっぽう)対策
運転状況によっては、曝気槽の表面が大量の泡で覆われる「発泡」というトラブルが発生することがあります。原因は、排水中の界面活性剤や油分、特定の微生物の異常増殖など多岐にわたります。消泡剤の使用や、原因物質の流入抑制などの対策が必要です。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
曝気槽の「顔色」を読むことも大切ですよ。毎日、水面の色や泡の状態、臭いなどを観察することで、微生物の健康状態を推測できます。「いつもと泡の切れが悪いな」「水の色が黒っぽいな」といった変化は、何らかのトラブルの予兆かもしれません。日々の五感による観察が、安定運転の助けとなります。
さらに詳しく知りたい方へ
本日は曝気槽について解説しましたが、関連する「活性汚泥法」「DO」「MLSS」「散気装置」「バルキング」といった各用語についても、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。もし、曝気槽の運転管理でお困りのことがありましたら、いつでも澤本商事にご相談ください。
よく見られている用語
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