工場の排水処理における「SRT(汚泥滞留時間)」とは
こんにちは、さわまる博士です。
活性汚泥法を管理する上で、曝気槽の中にいる活性汚泥菌たちを、常に元気で活きの良い状態に保つことが大切です。そのためにコントロールされる指標の一つが、本日解説する「SRT(エスアールティー)」です。これは、汚泥の「年齢」のようなものだと考えてみてください。

SRTとは、どのような指標なのでしょうか?

SRTとは、Solids Retention Time または Sludge Retention Time の略で、日本語では「汚泥滞留時間」や「固形物滞留時間」と訳されます。
これは、排水処理のシステム全体(主に曝気槽と沈殿槽)の中に、活性汚泥(固形物)が平均して何日間とどまっているかを示す指標です。単位は「日」で表されます。
SRTが10日だとしたら、それは活性汚泥の平均年齢が10歳、というようなイメージです。
なぜSRTが重要なのですか?
SRTを適切な長さにコントロールすることは、活性汚泥菌の種類や活性を維持し、安定した処理水質を得るために非常に重要です。
- SRTが短すぎる場合
汚泥の年齢が若すぎる状態です。まだ十分に成熟していない若い活性汚泥菌ばかりになり、汚れを分解する能力が低かったり、フロックの形成が悪くて沈降性が悪くなったりすることがあります。特に、増殖スピードが遅い「硝化菌」などは、SRTが短いと系外に流出してしまい、窒素除去がうまくいかなくなります。 - SRTが長すぎる場合
汚泥の年齢が高すぎる状態です。年老いた活性汚泥菌の割合が増え、全体の活性が低下したり、汚泥が自己分解してフロックが細かく壊れ(解体)、処理水が濁ったりする原因になります。また、MLSS濃度が高くなりすぎ、バルキングを引き起こしやすくなることもあります。
このように、SRTは短すぎても長すぎてもいけません。処理したい排水の性質や水温などに応じて、最も処理効率が良くなる最適なSRTがあり、その範囲を維持するように日々の運転管理が行われます。
SRTの調整方法
SRTは、主にシステムの外に引き抜く「余剰汚泥」の量によってコントロールされます。
SRTを短くしたい場合は、余剰汚泥の引き抜き量を増やします。逆に、SRTを長くしたい場合は、引き抜き量を減らします。つまり、SRTとMLSSは密接に関係しており、両方のバランスを見ながら運転管理を行う必要があるのです。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
水温が低い冬場は、活性汚泥菌の活動が鈍くなるため、汚れを分解するのにより長い時間が必要になります。そのため、一般的に冬場はSRTを長めに設定し、逆に水温が高い夏場はSRTを短めに設定する、といった季節ごとの調整も、安定運転のための大切なテクニックですよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はSRTについて解説しましたが、SRTの調整に不可欠な「余剰汚泥」や、関連する指標である「MLSS」、そしてSRTの長短が影響する「硝化」や「バルキング」といった用語も、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。
SRTの適切な設定や運転管理でお困りの際は、いつでも澤本商事にご相談ください。
よく見られている用語
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