油水分解槽

工場の排水処理における「油水分解槽」とは

こんにちは、さわまる博士です。
工場の排水には、機械の潤滑や製品の洗浄などで使用された「油分」が含まれることが少なくありません。この油分は、排水処理設備や環境に大きな影響を与える可能性があります。
本日は、その油分を水と分離する重要な役割を持つ「油水分解槽(ゆすいぶんかいそう)」について解説します。

さわまる博士

油水分解槽とは、どのような設備なのでしょうか?

油水分解槽とは、その名の通り、排水中に混在する油分と水を分離するための水槽や装置のことです。多くの工場で、本格的な排水処理を行う前の「前処理設備」として設置されています。

油水分離の重要性

なぜ、事前に油分を分離する必要があるのでしょうか。もし油分がそのまま後段の処理設備に流入すると、以下のような問題を引き起こす可能性があります。

  • 生物処理への阻害
    活性汚泥法などの生物処理では、油分が活性汚泥菌の表面を覆ってしまい、酸素や栄養の取り込みを阻害し、その活動を低下させます。
  • 配管の閉塞
    油脂は低温で固化しやすく、配管内で閉塞を起こす原因となります。
  • 環境汚染
    油分を含む水が河川や海洋に流出すると、水面に油膜を形成し、水中の生物の酸欠や生態系への悪影響を引き起こします。

油水分解槽はどのような仕組みで分離するのですか?

分離の原理にはいくつかの種類があります。

基本は「比重差」の利用

最も基本的な原理は、油が水よりも軽いという物理的な性質(比重差)を利用するものです。排水を槽内でゆっくりと流すことで、油分を自然に水面に浮上させ、水分を槽の下部から排出します。槽内には、水の流れを整え、分離効率を高めるための邪魔板(バッフル)などが設置されていることが一般的です。

より効率的な分離のための工夫

さらに効率を上げるため、以下のような機構が用いられることもあります。

  • コアレッサープレート(油吸着板)
    微細な油滴同士を衝突・合体させて大きな油滴に成長させ、浮上しやすくするための板状の充填物です。
  • 傾斜板式
    槽内に多数の傾斜した板を設け、油滴が短い距離で浮上できるようにし、装置の小型化と分離効率の向上を図ります。

なお、水中に微細な粒子として分散してしまった油(乳化油・エマルション)は、比重差だけでは分離が困難なため、「加圧浮上分離装置」などのより高度な設備や、薬品による処理が必要となる場合があります。

回収された油の行方

分離・浮上した油は、オイルスキマーなどの装置で回収され、油貯留槽に一時的に保管された後、産業廃棄物として専門の業者によって適切に処理されます。

油水分解槽を運用する上での注意点

定期的な清掃の重要性

分離能力を維持するためには、浮上した油や槽底に溜まった固形物(スラッジ)の定期的な除去が不可欠です。これらを放置すると、能力低下や悪臭、害虫発生の原因となります。

乳化油(エマルション)への対応

洗剤などが使用される工程からの排水では、油が乳化しやすくなります。このような排水に対しては、凝集剤や乳化破壊剤といった薬品の使用や、分離膜などの特別な対策が必要となる場合があります。

流入油の管理

油水分解槽は、処理できる油の種類や量に設計上の限界があります。設計値を超える油の流入は処理能力を超え、油の流出につながります。日頃から、どのような油がどれくらい排出されているかを把握しておくことが重要です。

さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!

油水分解槽の管理で最も効果的なことは、「上流での対策」です。製造工程でそもそも油の使用量を削減したり、床にこぼれた油が直接排水溝に流入しないよう対策したりするだけで、油水分解槽の負荷は大幅に軽減されます。日々の少しの工夫が、排水処理全体の安定化につながるんですよ。

さらに詳しく知りたい方へ

本日は油水分解槽について解説しましたが、関連する「グリストラップ」「加圧浮上処理」「n-ヘキサン抽出物質」といった各用語についても、順次解説していきます。もし、工場の油水分離でお困りのことや、設備の選定・管理についてご相談がありましたら、いつでも澤本商事にご連絡ください。

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