工場の排水処理における「MLVSS」とは
こんにちは、さわまる博士です。
排水処理の曝気槽に含まれる活性汚泥の総量を測る指標として「MLSS」があります。これは、水中の浮遊物質(SS)の総重量を示すものでした。
しかし、このMLSSの中には、BODを分解してくれる「生きている微生物」だけでなく、砂や無機物、死んでしまった微生物の殻など、「排水処理に直接貢献しない物質」も含まれています。
そこで、MLSSのうち「本当に働いている、生きている微生物(有機物)」の部分だけを測る指標が、本日解説する「MLVSS(エムエルブイエスエス)」です。

排水処理における「MLVSS」とは、どのようなものでしょうか?

MLVSS(Mixed Liquor Volatile Suspended Solids)とは、日本語で「混合液浮遊物質強熱減量」と呼ばれ、曝気槽の活性汚泥(MLSS)に含まれる「有機物」の量を示します。
測定は、まずMLSSと同様に、ろ紙で汚泥をこし取り乾燥させて重さ(MLSS)を測ります。その後、そのろ紙ごと電気炉に入れ、高温(約600℃)で燃やします。この時、燃えてなくなる部分(=揮発する部分)が「有機物(=VSS)」であり、燃え残った灰(=強熱残留物)が「無機物」です。
この「燃えてなくなった重さ(=MLVSS)」こそが、曝気槽にいる微生物本体の量(バイオマス量)の目安となります。
排水処理におけるMLVSSの活用
MLVSSは、MLSSよりも正確に「生物学的な活性(どれだけ微生物がいるか)」を評価するための指標として使われます。
- VSS/SS比(活性度)の管理
MLSS全体に占めるMLVSSの割合(=VSS/SS比)は、活性汚泥の「活性度」の目安となります。
この比率が通常時(例:70~80%)よりも低下してきた場合、曝気槽内に砂などの無機物が溜まってきている、あるいは汚泥のSRT(滞留時間)が長すぎて微生物が自己分解(死滅)している、といった排水処理の状態変化を示唆します。 - F/M比の精密な計算
曝気槽の「汚泥負荷」を計算する「F/M比」は、本来「BOD量(F)」を「微生物量(M)」で割るものです。この「M」として、MLSSの値を使うよりも、より実態に近いMLVSSの値を用いることで、微生物に実際にかかっている負荷を、より正確に計算することができます。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
MLVSSの測定には、電気炉が必要で時間もかかるため、日常的な管理ではMLSSが広く使われています。
しかし、排水処理の設計時や、プラントの調子がおかしい時に「そもそも微生物はちゃんと生きているのか?」という根本的な原因を調査する際には、このMLVSS(またはVSS/SS比)のデータが非常に重要な手がかりとなるんですよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はMLVSSについて解説しましたが、この指標の基本となる「MLSS」や、MLVSSを使って計算される「F/M比」、そして活性汚泥の滞留時間を示す「SRT」といった用語も、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。
よく見られている用語

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