工場の排水処理における「膜分離活性汚泥法(MBR)」とは
こんにちは、さわまる博士です。
従来の活性汚泥法では、「曝気槽」で微生物にBODを分解させ、次の「沈殿槽」で微生物(汚泥フロック)を重力で沈めて、きれいな上澄み水を取り出していました。
しかし、この「沈殿槽」での沈降性に頼らず、もっと高度な方法で水と汚泥を強制的に分離する技術があります。それが本日解説する「膜分離活性汚泥法(まくぶんりかっせいおでいほう)」、通称「MBR」です。

排水処理における「MBR」とは、どのようなものでしょうか?

MBR(Membrane Bio-Reactor)とは、活性汚泥法による生物処理(Bio-Reactor)と、精密ろ過膜(MF)や限外ろ過膜(UF)といった微細な孔(あな)を持つ「膜(Membrane)」によるろ過を組み合わせた、高度な排水処理技術です。
最大の特徴は、最終沈殿槽を設置しないことです。代わりに、曝気槽内に「膜ユニット」と呼ばれる膜モジュールを直接浸漬させるか、曝気槽の外に膜装置を設置し、活性汚泥混合液をポンプなどで吸引し、「膜」で強制的にろ過します。
MBRによる排水処理のメリットとデメリット
MBRには、従来の活性汚泥法にはない大きなメリットがあります。
- メリット1:非常にきれいな処理水
沈殿槽では分離できないような微細なSSやフロック、大腸菌なども、膜が物理的にシャットアウトします。そのため、極めて清澄で安全性の高い処理水が得られ、処理水を再利用する際の前処理としても有効です。 - メリット2:曝気槽の高濃度運転と省スペース化
沈殿槽の沈降性を気にする必要がないため、曝気槽のMLSS濃度を非常に高く(10,000~20,000mg/L程度)保てます。これにより、BOD負荷に強く、かつ曝気槽の容積を小さく(省スペース化)できます。 - メリット3:バルキングの影響を受けない
沈降性が関係ないため、バルキングが発生してフロックが沈まなくなっても、処理水質が悪化する心配がありません。
一方で、以下のような管理上の注意点もあります。
- デメリット:膜の目詰まり(ファウリング)
運転を続けると、膜の表面や内部が汚泥や粘性物質で目詰まり(ファウリング)します。これを防ぐために、定期的な空気洗浄(エアレーション)や薬品洗浄(次亜塩素酸ナトリウムなど)といったメンテナンスが不可欠です。また、膜は消耗品であり、いずれ交換が必要になります。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
MBRは、工場の設置スペースが限られている場合や、処理水の放流基準が非常に厳しい場合、あるいは処理水を工場内で再利用したい場合などに採用される、非常に強力な処理方法です。
ただし、その心臓部である「膜」をいかに安定して維持管理し、目詰まりをコントロールするかが、運用の最大のキモとなります。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はMBRについて解説しましたが、従来の処理方法である「活性汚泥法」や、MBRが不要にする「沈殿槽」、曝気槽の指標である「MLSS」といった用語も、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。
よく見られている用語

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