工場の排水処理における「調整槽」とは
こんにちは、さわまる博士です。
工場の排水処理には、様々な役割を持つ水槽が連携して活躍しています。その中でも、後段の処理設備を守り、全体の安定性を支える「縁の下の力持ち」がいるのをご存知でしょうか。
本日は、その重要な役割を担う「調整槽(ちょうせいそう)」について解説します。

調整槽とは、どのような役割を持つのでしょうか?
調整槽とは、工場から排出される排水を一時的に貯留し、流量や水質の変動を均一化(平準化)するための設備です。多くの排水処理プロセスにおいて、生物処理(曝気槽など)の前段に設置されます。調整槽があるおかげで、後段の処理設備は安定してその能力を発揮することができるのです。
なぜ流量や水質の均一化が必要なのですか?
工場の排水は、生産スケジュールや洗浄作業などによって、時間帯ごとに排出される量(流量)や、含まれる汚れの濃さ(水質)が大きく変動します。もし、この変動の激しい排水を直接、生物処理設備に送ってしまうと、以下のような問題が起こる可能性があります。
- 流量の変動による問題
一度に大量の水が流れ込むと、処理能力を超えてしまい、十分に浄化されないまま水が排出されてしまう(ショートパス)ことがあります。 - 水質の変動による問題
急に高濃度の排水や、酸性・アルカリ性に極端に偏った排水が流入すると、処理の主役である活性汚泥菌などの微生物がショックを受けて活動が弱まったり、死滅したりして、処理機能全体が停止してしまう危険性があります。
調整槽は、このような事態を防ぐための、いわば「ダム」や「交通整理役」のような役割を果たしているのです。
調整槽の主な機能
- 流量調整(均一化)
大きな水槽で排水を受け止め、貯留することで、時間による流量のバラつきを吸収します。そして、槽内の水位を監視しながらポンプを使い、後段の設備へ常に一定の流量を安定して移送します。 - 水質調整(均質化)
濃い排水と薄い排水を槽内で混ぜ合わせることで、水質を均一にします。多くの場合、槽内には「ブロワー」から送られた空気を「散気管」で放出して撹拌する仕組みがあり、排水を常に混合して水質の偏りをなくします。 - pHの調整
酸性やアルカリ性の排水が流入する場合、槽内にpHセンサーを設置し、その値に応じて自動で薬品(pH調整剤)を注入して、後段の処理に適した中性付近のpHに調整する機能を持つこともあります。 - 油脂が多い場合の対策
加圧浮上装置や油水分離槽を設けて油脂の混入を事前に除去します。又は調整槽に油脂分解剤を注入し、分解促進を行うことも有効です。
調整槽を運転する上での注意点
固形物の蓄積と腐敗による臭い
調整槽の底部には、排水に含まれる固形物や汚泥(スラッジ)が沈降して溜まりやすい性質があります。この汚泥を放置すると、槽内が酸素のない嫌気状態になり、汚泥が腐敗して「硫化水素」などの悪臭ガスが発生する主な原因となります。対策として、汚泥が溜まらないように散気管の数を増やしたり、空気量を増やしたりする予防策が有効ですが、それでも堆積する汚泥は定期的に清掃(引き抜き)することが望ましいです。
ブロワーの管理
水質を均一化するための撹拌や、腐敗防止のための曝気に使われるブロワーが正常に稼働しているか、日々の点検が欠かせません。散気管の目詰まりなどによって撹拌不良が起きると、水質が均一にならず、臭いの原因となります。
油分の混入
多量の油分が流入すると、水面を覆ってしまったり、槽内に付着したりして、悪臭や配管閉塞の原因となります。油分を多く含む排水の場合は、調整槽の前段で油水分離を行うことが望ましいです。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
調整槽は、つい「ただ排水を貯めているだけの水槽」と思われがちですが、実は後段の処理設備すべてのパフォーマンスを左右する、非常に重要な「司令塔」の一部なんです。槽内の水の臭いや水面の発泡の有無など、日々のちょっとした変化に気づくことが、大きなトラブルを未然に防ぐ第一歩ですよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日は調整槽について解説しましたが、関連する「pH」「曝気槽」「汚泥」「硫化水素」といった各用語についても、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。もし、調整槽の臭いや汚泥の引き抜きでお困りのことがありましたら、いつでも澤本商事にご相談ください。
よく見られている用語
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