工場の排水処理における「バルキング」とは
こんにちは、さわまる博士です。
活性汚泥法を用いた排水処理において、最も代表的で、多くの担当者を悩ませるトラブルの一つが「バルキング」です。
本日は、このバルキングという現象について、その原因から対策の考え方までを解説します。

バルキングとは、どのような現象なのでしょうか?
バルキングとは、活性汚泥の沈降性が著しく悪化し、沈殿槽で汚泥が沈みにくく、または全く沈まなくなる現象のことです。活性汚泥フロック(微生物の塊)が膨張(Bulk)することから、この名前が付けられました。これにより、沈殿槽での固液分離が不十分となり、処理水質の大幅な悪化を招きます。
バルキングの主な原因
バルキングの原因は多岐にわたりますが、主に以下の二つに大別されます。
糸状性(しじょうせい)バルキング
最も一般的な原因です。活性汚泥の中に存在する、糸のような形状をした微生物(糸状性細菌や放線菌)が異常に増殖することで発生します。この糸状の微生物がフロック間に橋を架けるように絡みつき、フロックが緻密に締まるのを妨げます。その結果、フロックは大きく、軽く、水を多く含んだスカスカの構造になり、沈降性が著しく低下します。低DO(溶存酸素)環境、栄養塩(窒素、リン)の不足、特定の基質の存在などが、糸状性微生物の増殖を促す要因となることがあります。
粘性(ねんせい)バルキング
これは、曝気槽内の混合液全体の粘度が高くなることで、物理的に汚泥の沈降が妨げられる現象です。微生物が産生するネバネバした物質(菌体外多糖類、EPS)の過剰分泌や、排水中に含まれる高分子物質(デンプン、タンパク質など)が十分に分解されないことが主な原因となります。
バルキングが起きた場合の対策の考え方
原因の特定が最重要
バルキング対策の第一歩は、その原因が「糸状性」なのか「粘性」なのか、あるいは他の要因(負荷変動など)が複合しているのかを正確に特定することです。顕微鏡による汚泥の観察(糸状微生物の有無や種類の確認)や、SVI(汚泥容量指標)、粘度測定などの分析が不可欠です。
原因に応じた対策
原因の特定後、それに応じた対策を講じます。
- 糸状性バルキングの場合
DO濃度の調整、栄養塩バランスの是正、原因となる基質の流入抑制、選択的な殺菌剤の使用、あるいは高分子凝集剤などを添加して強制的に汚泥を沈降させる方法などがあります。 - 粘性バルキングの場合
曝気槽への負荷量の調整、原因物質の分解を促進する薬剤の添加、曝気方法の調整などが有効な場合があります。
日々の観察による早期発見
バルキングは、深刻化する前に対処することが重要です。日々の沈殿槽の透視度測定や汚泥界面の観察、曝気槽の泡の状態確認などを通じて、異常の兆候を早期に発見することが、安定した運転につながります。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
バルキングは、活性汚泥菌たちが「今の環境は働きにくいよ!」と送っているサインです。なぜ彼らがそういう状態になったのか、その根本原因に目を向けることが解決への近道です。薬剤による対症療法も時には必要ですが、同時に、なぜトラブルが起きたのかを分析し、運転管理や前処理を見直すことが、再発防止のために非常に重要ですよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はバルキングについて解説しましたが、関連する「活性汚泥法」「沈殿槽」「糸状性細菌」「SVI」「DO」「凝集剤」といった各用語についても、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。もし、繰り返すバルキングでお困りの場合や、原因の特定が困難な場合は、いつでも澤本商事にご相談ください。専門的な診断に基づき、最適な解決策をご提案します。
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