工場の排水処理における「アルカリ度」とは
こんにちは、さわまる博士です。
工場の排水処理、特に生物処理(活性汚泥法)を安定させるには、pHを一定の範囲(通常は中性付近)に保つことが非常に重要です。しかし、pHの値だけを見ていると、急な変動に対応できないことがあります。
そこで重要になるのが、pHの変動に対する「抵抗力」や「緩衝能力」を示す指標、本日解説する「アルカリ度」です。

排水処理における「アルカリ度」とは、どのようなものでしょうか?

アルカリ度とは、水が酸(H+)を受け入れた際に、pHの低下をどれだけ抑えられるかという「緩衝能力」の強さを示す指標です。水中に含まれる炭酸水素イオン(HCO3-)や炭酸イオン(CO3 2-)などが、この緩衝作用の主役となります。
よく「アルカリ性」と混同されますが、pHが「現在の状態(アルカリ性か酸性か)」を示す値であるのに対し、アルカリ度は「酸に対する抵抗力(どれだけpHが下がりにくいか)」を示す値であり、意味が異なります。pHが高くてもアルカリ度が低い水もあれば、pHが中性でもアルカリ度が高い水もあります。
排水処理におけるアルカリ度の役割と重要性
排水処理のプロセス、特に生物処理において、アルカリ度は極めて重要な役割を果たします。
- 硝化反応によるpH低下の防止
窒素除去の第一段階である「硝化」が進むと、アンモニアが酸化される過程で酸(水素イオン H+)が生成されます。この酸によって、曝気槽のpHはどんどん低下しようとします。
ここでアルカリ度が十分に高ければ、その緩衝作用によってpHの低下が抑えられ、硝化菌が安定して働ける環境が維持されます。逆にアルカリ度が不足すると、pHが急激に低下し、硝化菌の活性が停止、処理水質が悪化する原因となります。 - 嫌気処理の安定化
メタン発酵などの嫌気処理においても、有機物が分解される過程で有機酸が生成されます。この酸によるpH低下を防ぎ、メタン菌の働きを安定させるためにも、高いアルカリ度の維持が不可欠です。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
排水処理、特に硝化を行う場合は、消費されるアルカリ度をあらかじめ計算しておく必要があります。
もし流入してくる排水のアルカリ度がもともと低い場合は、pHの低下を防ぐために、あらかじめ炭酸ナトリウム(ソーダ灰)や水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)などのアルカリ剤を添加し、アルカリ度を補っておく必要があるんですよ。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はアルカリ度について解説しましたが、これが深く関係する「pH」や、アルカリ度を消費する「硝化」プロセス、そして窒素除去の全体像である「T-N(総窒素)」といった用語も、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。
よく見られている用語

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