工場の排水処理における「イオン交換樹脂」とは
こんにちは、さわまる博士です。
工場では、製品の品質を保つための洗浄水や、ボイラーでスケール(水垢)が発生するのを防ぐために、水に含まれる不純物、特に「イオン」を除去する必要があります。
また、排水処理においても、特定の有害な金属イオンを除去したり、処理水を再利用するために純度を高めたりする「高度処理」で使われることがあります。その際に活躍するのが、特殊なビーズ状の物質「イオン交換樹脂」です。

イオン交換樹脂とは、どのようなものでしょうか?

イオン交換樹脂とは、水中に溶けているイオン(Ca2+, Mg2+, Cl-など)を、樹脂自身が持っている別のイオン(H+, OH-, Na+など)と「交換(トレード)」する能力を持った、合成樹脂のことです。
直径1mm以下の小さなビーズ状で、このビーズを詰めた「イオン交換塔」と呼ばれる筒に水を通すことで、水中の不要なイオンを取り除きます。 大きく分けて、陽イオンを交換する「カチオン交換樹脂」と、陰イオンを交換する「アニオン交換樹脂」の2種類があります。
イオン交換樹脂の主な用途
イオン交換樹脂は、そのイオンを交換する能力を利用して、主に2つの目的で使われます。
- 軟水の製造(水軟化)
カチオン交換樹脂(Na+型)を使い、水中の硬度成分(カルシウムイオン Ca2+ やマグネシウムイオン Mg2+)を、樹脂が持つナトリウムイオン(Na+)と交換して取り除きます。これにより、ボイラーや配管、冷却塔などでのスケール付着を防ぎます。 - 純水(脱イオン水)の製造
カチオン交換樹脂(H+型)とアニオン交換樹脂(OH-型)の両方を使い、水に溶けているほぼ全ての陽イオンをH+に、陰イオンをOH-に交換します。取り出されたH+とOH-は結合して水(H2O)になるため、結果として水以外のイオンが取り除かれた「純水」が出来上がります。工場の製造ラインや精密機器の洗浄などに使われます。
さわまる博士の
ワンポイントアドバイス!
イオン交換樹脂は、イオンを交換し続けると、やがて能力がなくなってしまいます(=破過)。ですが、多くの場合、使い捨てではありません。
例えば、軟水器(Na+型)の場合は、濃い食塩水(NaCl水)を流すことで、樹脂が取り込んだCa2+やMg2+を放出し、再びNa+を持つ状態に戻すことができます。この作業を「再生」と呼びます。この再生作業が、イオン交換樹脂を運用する上で非常に重要な管理項目となります。
さらに詳しく知りたい方へ
本日はイオン交換樹脂について解説しましたが、これが防ぐトラブルである「スケール」や、関連する水質指標である「導電率(EC)」(イオンがなくなると下がる)、樹脂の再生に使われる「苛性ソーダ」(アニオン樹脂の再生)といった用語も、併せてご確認いただくことで、より理解が深まります。
よく見られている用語

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